そして、マカオ by Tomoco

2013年からの香港のアーティストとの共同プロジェクト「絶対的」や、2016年度のJCDNのAIRプログラム@香港でも協働している粤劇(広東オペラ)プレイヤーのパリス・ウォンとマカオで待ち合わせ。マカオ美術館で開催されている『海上生輝』を観に行く。中国王宮博物館に所蔵されている海派(海=上海)の絵画を特集した展覧会。主に19世紀~20世紀初頭に活躍した画家たちの作品。海派は、中国の伝統的な絵画のスタイルに西洋からの影響を取り入れて展開した一派。商品として売るために描かれた作品の多くは、お金持ちに愛されるモチーフや、誰もが知っている物語や人物をモデルにしたものが多く描かれた。一方で宮廷画家としてのプライドをかけた作品では、西洋の技術を取り入れ変化する最先端のスタイルで描かれている。決して大きすぎない美術館の丁寧なキュレーション。このマカオ美術館は年に1回、王宮博物館所蔵作品の展覧会をやっているそうで、パリスは毎年この美術館に訪れるという。粤劇の題材にもなる物語をテーマにしている絵画も多いし、テーマによっては衣裳の展示などもあり、とても参考になるとか。

さて、マカオ。

香港とマカオ。似ているようで、まったく違う2つの都市。香港がイギリスの支配下で“自由”を楽しんでいたころ、マカオはポルトガルの圧政に苦しんでいた。植民地時代の建物が多く残るマカオは、島のあちらこちらで世界遺産に会う(この歩けば世界遺産に当たる感じは少しローマっぽい)。香港ドル:マカオパタカ=1:1で使われていて、香港ドルで支払いをすれば、香港ドルでお釣りをくれる。ただし、タクシーなどはパタカで返ってくる。第一言語は共に広東語。でも、発音などの違いが少しはあるんだろうか? 第二言語は英語とポルトガル語と異なるし、街中のサインで言えばマカオは圧倒的にポルトガル語。香港は広東語と中国普通語(マンダリン)がほとんど。マカオには高級ホテル、カジノ、ハイブランドの集まるショッピングモール。どちらも人はとても多い。金融街の人と、観光の人。エッグタルトはマカオの方が先。そびえたつ変な形のホテル(これも風水なんだろうか)はあるけれど、香港ほどの楊枝ビルの密度はないし、低い建物も多い。マカオはエキゾチックさが求められているけれど、香港は違うと感じる。変化のスピード、これはもう完璧に、香港が速い。速すぎるくらい。

マカオ美術館でパリスの詳細な解説に耳を傾けながら、同じ広東語を母語とするこの2つの都市の大きな違いが浮かび上がってくる。橋は、この2つの都市の関係を変えるのだろうか。観光都市、世界遺産の都市としての“保存”を求められているマカオの変化も、ゆっくりと目に見えない(観光客が多くなるとかの変化はすぐにわかるだろうけど)変化をしていくのだろう。香港のほうは、きっと大きな変化をしていくに違いない。

f:id:tomococafe:20190321115907j:plain

マカオの街並を眺める

 

主催:NPO法人ジャパン・コンテンポラリーダンス・ネットワーク

平成30年度文化庁アーティスト・イン・レジデンス活動支援事業